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2016-04-25【恋愛】
第5回新恋愛心理学-自己犠牲という名の恋愛-
「自己犠牲という名の恋愛」
自己犠牲を語る前に「甘やかし」について語らねばなりません。
幼児がおもちゃのボールを放り投げて「ママ、ボール取って来て」と言うとき、
我が子に関心のある母親は、そのボールを取ってあげながら我が子が今なにを欲しているのかを探ります。
1回目では無理だとしても、取ってやったボールをすぐにまた放り投げて「ママ、ボール取って来て」と言われれば、さすがに気が付きますね。
子供は、ボールが欲しいのではなく、母親の関心が欲しいのです。
これは、分かりやすい例ですが、実際の子育ての場面ではこんなに簡単にはいきません。
いつもいつも子供の心の変化を読み取って、本当に欲しいものは何かを考えながら接することは不可能です。
そうすると、子供が欲しいというものを額面通りに与えてしまうことに陥りやすくなります。
そして、本当に欲しいものが手に入らなかった子供はどうなるでしょう。
当然子供の要求はエスカレートしていきます。
最初は「あのボール取って来て」でしたが、そのうち
・三輪車が欲しい
・スケボーが欲しい
・新しい洋服が欲しい
・ゲーム機が欲しい
と永遠に要求してきますね。でも真に欲しいものは言葉にしません。
サインでしか表現しないのです。
サインには、
・不登校
・摂食障害
・抑うつ
・物を壊す
・自傷
などがあります。
子供の要求に対し、無分別に与えることを「甘やかし」といいます。
「甘やかし」とは、子供が親に「甘えて」要求してきたものを与えることではなく、
「甘えて」要求してきたもの以外を与えることをいいます。
上の例で言うと、幼児は「甘えて」母親の関心が欲しかったのに、
我が子の言うことを額面通りに受け取った母親は、
ただボールを取り戻しただけという場合が「甘やかし」に当たります。
幼児にとっては、「甘えた」のに本当に欲しいもの以外のものが与えられたわけです。
そうするとこの子の心のなかでは、次のような会話が成立します。
『この世界では自分の真の要求は通らないのだ、自分は誰からも関心を持たれないのだ』
この世界は、この子にとっては、間違った世界であり、ひどく傷つけられた世界になるわけです。
ここが重要です。
この子が将来、自己犠牲をする可能性があります。
自己犠牲とは、「間違ったこの世界への復讐」という意味が込められています。
(この場合の世界とは、自分以外の全てです。親も兄弟も恋人もすべて世界の一部です)
なぜ「復讐」になるのかというと、
日常生活においては、この世界は不都合のない世界で、自分の力の及ばない巨人に映るわけです。
かたや自分は、小さな存在で腕力も経済力もなく、世間からも顧みられることのない人間だと思っています。
でもこの子の心の奥底では「この世界は間違っている」のです。
それを証明するためには、「復讐」という方法しかないのです。
この世界が自分に送り込んできた使者と対決し、自分の正しさを証明し、相手の無能もしくは無慈悲を暴露することが、生きる目的になります。
この世界が自分に送り込んできた使者とは、親であったり、恋人であったりするわけです。
この子が成長して大人になって恋をしたとしましょう。
すると以下のようになる可能性があります。
たとえば、恋愛において、彼氏のために大金を貢いでしまう女性がいます。
車を与えたり、旅行に連れて行ったり。
彼の喜ぶ顔が見たいからと言いますが、彼の要求はどんどんエスカレートしていきますよね。
いつまでもお金が続くわけではないので、いずれは、破局がやってきます。
そうすると、彼女としては、「わたしがあんなにしてあげたのに」と恨みが残りますね。
いま、「そうそう、恨みが残るかも」と思ったあなた。
あなたは、ノーマルです。
実は、破局を迎えても、あのわがままな彼氏を寛大な気持ちで許せるのが自己犠牲の自己犠牲たる所以なのです。
「んな、ばかな」
と思ったあなた。あなたもノーマルです。
なぜ許せるのか。
というか、こんな彼氏を「許す」までがワンサイクルだと思ってください。
彼氏を許すことによって、彼女には報酬が与えられます。
それは、「道徳的優越感」です。
この優越感を手にすることで、「わたしは、正しいことをした。間違っているのはこの世界なのだ」を証明できるからです。
しかも、その間違っている相手(世界)を許すことによって、相手を自分の足下にひれ伏せることができる。
すなわち復讐を遂げたわけです。
子供の頃に確信した「この世界は間違っている」ことを証明し、復讐を遂げることができたのです。
そして、またまた不思議なことに、お金の切れ目が縁の切れ目といわんばかりに自分を棄てた彼から復縁を迫られると嬉々として応じてしまったりもするのです。
なぜか。
簡単です。
また、あのワンサイクルが経験できるからです。
終わりのないサイクルに入っていきます。
死ぬまでこのサイクルは続きます。手を打たない限り。
あなたの周りにも自己犠牲する友達のひとりやふたりはいるでしょう。
その友達が、恋愛中の彼女や彼氏のどうしようもない素行や要求を語るとき
確かに困った風に話してはいるけれど、表情はうれしそうにしているのに気づいたことはありませんか。
(どうだったかな?と思った方は、今度よーく観察してみてください)
そういう友達を救ってあげたいと思ったことはありますか?
「わたしに出来ることがあれば、何でもするよ」と言ってしまったことのある人。
要注意です。
出来るだけ早く手を打ちましょう。
見ず知らずの子供が目の前で溺れていても、無闇に海に飛び込んではいけません。
ふたりとも溺れる可能性があるからです。
どうしても助けたかったら、溺れている人が十分に弱ってから救助するか
浮き輪の代りになるものを探しましょう。
それくらいの冷静さが必要です。
見ず知らずの酔っ払いがホームから線路に転落したとしても、無闇に線路に降りてはいけません。
十分に安全を確認して、まず駅員に通報するくらいの冷静さが必要です。
でないとあなたも電車に轢かれてしまいます。
恋人でも親子でも、いま与えたいと思っているものが、真に相手が欲しいものかどうか吟味してください。
そして、それを自分が与えていいのかどうかも吟味してください。
時には、与えないことも愛なのです。あるいは、与えないことも正義なのです。
自分の才覚で手に入れることができる人には、安易に与えず、自立への援助が優先されます。
時には、相手の怒りを買うことになるかもしれませんが、その時は対決することが愛だと信じてください。
どうしても信じられないなら、次々回からの「上手な恋愛の仕方」を参考にしてください。
それと、早く手を打たないといけないと思ったあなた。
あなたも「上手な恋愛の仕方」を参考にしてください。
手の打ちどころを解説しますので。
----------------
次回は、日本人に多い「社会的マゾヒズムと恋愛」についての記事です。
マゾヒズムとは、倒錯愛のことです。
サドマゾのマゾです。
マゾヒズムとかサドヒズムというと性的な関係を思い浮かべる方が多いでしょうが、
性的な関係を抜きにした、いわゆる「社会的マゾヒズム」のほうが圧倒的に多いのです。
(ちなみに、サドとマゾでは、圧倒的にマゾのほうが多いです)
次々回から「上手な恋愛の仕方」について書きます。やっと楽しい話題が書けそうです。ほっ。
芳野 正彦
日本嗜癖行動学会正会員
米国アライアント大学大学院精神病理学履修
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